第1回 FIBO(Financial Industrial Business Ontology) <金融オントロジー>

最近FIBOに興味をもち、Ontologyとはなんぞ?から調べ始めたところだんだんはまっていってしまい、Youtubeもあわせて記事や情報を集めるようになりました。
少しずつ紹介できたらと思います。

FIBOとは

 金融に係る用語・概念を定義したVocabulary(用語集)、RDF(後述)、Graph概念図等のデータの集合体を総称する。
 Ontology自体が普遍的な共通言語を構築することを目指しているため、「金融業界で共有可能な言語」を標準化したものをいう。金融機関に関わらず誰が話しても共通した認識を持つことができる、IT化された「金融用語辞典」と考えるとわかりやすい。
 金融用語は特に金融機関が異なると違う言葉を使う傾向があり、業界標準化が遅れている。例えば稟議書の表書き(役員がハンコを押す一枚紙)をある銀行は 「稟議サマリー」というし、ある銀行は「かがみ」(鑑みるになぞらえている?)というように企業の成り立ちや経緯によって方言が強い。

FIBOを提唱する団体

 EDMC(Enterprise data management council)
 米銀WelsFargoや米国証券会社のGoldmanSacsが中心となって設立した団体。正式名称はThe Enterprise Data management Councilで2005年に金融機関におけるデータ管理実務の発展を目的にニューヨークで設立された。実質的な業界標準である「データ管理評価モデル:Data Management Capability Assessment Model(DCAM)」や「金融商品の体系モデル:Financial Industry Business Ontology(FIBO)」を提唱している。

https://edmcouncil.org/

Ontologyについて

Ontologyとは(Wikiペディアより)

オントロジー (情報科学) - Wikipedia

 コンピュータ科学と情報科学において、オントロジー(概念体系)は、知識をあるドメイン内の概念と概念間の関係のセットとみなしたときの形式的表現である。そのドメイン内のエンティティ(実体)を理由付けしたり、ドメインを記述するのに使われる。哲学用語の(オントロジー)とは立ち位置が異なる。
情報科学においては、対象世界(知識領域)をある視点でみたときに立ち現われてくる構成要素(概念)を明示的に表現し、それらの関係を体系的に記述したもののこと。セマンティックウェブでは概念や意味を共有し、コンピュータが文書の意味を理解したり、情報を再利用したりするための基盤機構として構築される語彙(ごい)のセットをいう。

Ontologyの構成要素

セマンティック

基本的にセマンティックとは、2つのエンティティ(ユーザー、場所、モノ)を関係性に基づいてリンクし、トリプル(3つ組)を構成するデー タモデルです。リンクすることでトリプルはグラフを形成します。グラフには階層構造は無く、コンピューターにも理解でき、新たなファク トを推論できます。トリプル記述の標準言語はRDF(Resource Description Framework)であり、標準クエリ言語はSPARQLです。

Subject(主語)、Predicate(述語)、Object(目的語)という3つの部品の組合せでデータベースに格納します。そのためトリプルと呼ばれます。

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RDF (Wikiペディアより)

https://ja.wikipedia.org/wiki/RDF

Resource Description Framework (リソース・ディスクリプション・フレームワークRDF) は、ウェブ上にあるリソースのメタデータを記述するための枠組みであり、W3Cにより1999年2月に規格化されている(W3C:REC-rdf-syntax-19990222)[1]、邦訳:電子ネットワーク協議会[2])。RDFは、セマンティック・ウェブを実現するための技術的な構成要素の1つとなっており、代表例としてLinked Open Dataがある。
トリプル[編集]
RDFメタデータのモデルでは、主語(英: subject)述語(predicate)目的語(object)の3つの要素でリソースに関する関係情報を表現し、これをトリプル(triple)と呼ぶ。主語は記述対象のリソースである。述語は主語の特徴や主語と目的語との関係を示す。目的語は主語との関係のある物や述語の値である。

Ontologyが必要なわけ

下記図で表されているように、RDBRDFに返還する際に2つのエンティティーを結びつけるためにPredicateを関連付けてRDF化する。その際に一つ一つのRDFにタグを付けるのは非常に煩雑なのでOntologyをテンプレートとして利用する。テンプレートがあればいちいちPredicateを添付する必要がない。NOSQL等にデータをRDF形式で投入する場合にタグ付け処理をしないとトリプル形式で保存することができない。
以下その際の処理イメージ。

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オントロジーをテンプレートとして利用すると個別データを格納する際に必要なオントロジーを指定するだけで間のPredicate(例では担当する、報告する、従事する、所在する等)をそれぞれ割り当てが一回の処理で可能となる。

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FIBO概要

FIBOの利点

①旧来の2次元のデータ構造からN次元のデータ構造となるため検索や照会が極めて楽。
N次元のデータ構造のためどのClassからも検索が可能。Subject, Predicate,Objectのどの面からも紹介が可能となる
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②FIBOを利用することで様々な種類のデータのチェック(Validation)と調和(Harmonization)の確保が可能
f:id:William0105:20180716110103p:plain(EDM Council資料 FIBO™ The Next Generation Data Standard For The Financial Industry より)
③推論の利用が可能
 下図の例ではLIBOR金利を利用しているLEGはFloating Interestと推論が可能。
 f:id:William0105:20180716112121p:plain (EDM Council資料 FIBO™ The Next Generation Data Standard For The Financial Industry より)

FIBOのスコープ

FIBOの対象業務は以下の通り。
Foundationについては日付やDocument等の金融とは別に本来のビジネスに係るような基礎情報を定義した物である。FIBOの基盤情報。


http://www.hypercube.co.uk/edmcouncil/fibostatus.html

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FIBO 対象

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FIBOのスコープ


FIBOのスコープ概要

①Foundations
 さまざまな非金融分野の基盤セマンティクス。地理的、時間的な対象の表現。時間の経過とともに成熟するにつれて、業界標準のセマンティクスと整合することになります。
②Business Entities
 事業および法人、事業体の種類、所有権の階層および事業体間のコントロールに関する条項。LEIに必要な用語を含む
③Securities Reference Terms
 有価証券参照データに記載されている条件、つまり時間の経過とともに大きく変化しない(または個別の企業イベントのみに応じて変化する)条項です。
④Derivatives
 金融商品自体を表し、基礎となる金融商品や変数に基づいています。OTCおよび上場取引デリバティブを含みます。
⑤Loans
 企業および個人の両方に対する貸出に関する条件。クレジットファシリティーなどの基礎的なコンセプトを含みます。
⑥Market Data
 変動または時間依存の要素を含む有価証券または金融市場に関する条件。
 価格、利回り、有価証券の分析、格付けやステータスなどのその他の時間や日付の影響を受ける条件を含みます。
⑦Indices&Indicators
 金利、経済指標、取引インデックス、信用指標を定義する用語
⑧Funds
 集合投資ビークルまたはファンド。ファンド事業体、ファンドの持分を保有する手段端ファンドに関与する事業体に関する用語。
 ファンドのポートフオリオ条件についての条項を含む金融商品
⑨Portfolios and Holdings
特定の事業体のポートフオリオ、保有またはポジションについて、保有・報告される可能性のある資産の全範囲。
⑩Corporate Actions
 企業イベントおよび企業行動のための関連するメッセージを含むイベントおよびアクションの条項
⑪Payments
 取引条件と取引の決済面についての条項。 これは将来のスコープであり、まだ完全には説明されていません。

FIBOの構成要素

FIBOとして提供される構成要素は以下のもので、オントロジーとしては⑥である。オントロジーを記述したRDFをビジュアルにグラフィックで表現しているのが⑤.

ボキャブラリー(用語集)
 FIBOの用語集、人が読める形式の相互参照辞書 (HTML、.csV形式および.xls形式)。
②データ辞書
 CSVとxls形式のFIBO用語のExcelデータ辞書
③ビジュアルオントロジー(V○WL)Webページ
 各オントロジーのWebキュメンテーション(VOWLの表記法を使用)
UMLモデル
 FIBOの機械や人が読める形式のUML図(今後のOMGUMLプロファイルとして“SMIF"を使用)で情報連携を表現するのためのセマンティックモデリング図。
⑤FIBO-Vocabulary
 FIB○における機械可読なタクソノミ(拡張SKOS - Standard Knowledge Organization System)
オントロジーファイル
 WebOntologyLanguage(○WL)の機械可読ファイルで、RDF等様々な形式で提供されている。
⑦LinkedDataフラグメント
 特定のFIBOトリプルを検索する方法、またはクエリを実行する方法
schema.org
 FIBOから取得した用語で拡張された検索エンジンのWebページをマークアップするボキャブラリ群がURIで定義されているもの。




次回はFIBOの導入にあたって最低限必要なツールの説明とFIBO構成要素の説明をさらにしたいと思います。

william0105.hatenablog.com
william0105.hatenablog.com



<参考文献・資料>
Demystifying Financial Industry Semantics March 13 2012のスライド
https://www.omg.org/hot-topics/documents/finance/1110_Bennett.pdf#search=%27FIBO+ontology%27

FIBO Primer
 https://spec.edmcouncil.org/fibo/doc/20180331_FIBO_Primer.pdf

FIBO™ The Next Generation Data Standard For The Financial Industry
www.youtube.com